有機溶媒に可溶なフラビン類縁体であるリボフラビンテトラアセテート(F1)について、基質の酸化還元反応におけるメディエータとしての基礎的知見をまず有機電解液系で集積し、その後固体電解質系への適用を試みた。得られた知見は以下の通りである。 1 F1のジヒドロ還元体(F1H_2)は、アセトニトリル中においてキノン類を還元できるが、この反応はF1H_2からキノン類への一電子移動過程が律速であるとすると反応性を説明できることが判った。 2 アセトニトリル中、酸触媒として過塩素酸を添加し、光照射下でF1による基質としてのベンジルアルコールの酸化反応を検討した。その結果、この反応は酸触媒が基質濃度の10倍以上過剰になるまでは反応速度が大幅に増大してゆくことがわかった。 3 F1をメディエータとしたベンジルアルコールの電気化学的酸化反応を検討した。作用電極には白金を使用した。参照電極には銀/塩化銀電極を、対極には大面積の白金を使用した。この反応をアセトニトリル中で行ったところ、電解液に酸が存在しないときには光照射を行っても反応が進行しなかった。また、酸が存在しても光照射を行わなければ反応は進行しなかった。アセトニトリル中過塩素酸存在下、光照射を行うと電解開始30時間でほぼ100%の収率でベンズアルデヒドが得られた。この際電流効率は100%に近いものであった。 4 これらの反応を、有機電解液を含有する高分子ゲルのポリアクリロニトリル系電解質において検討した。その結果、反応の効率はかなり減少するが基本的には進行することが判った。この系の最適化については今後も検討を進める予定である。
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