研究概要 |
1.ガス検出特性に及ぼす被検ガスの反応と拡散性の影響 無担持または貴金属を担持したSnO_2を用いて,厚さ250〜300mumの厚膜型センサ素子を作製し,それらの素子の表面と内部の水素ガス感度を測定した。無担持SnO_2素子は表面より内部が著しく高いガス感度を示したが,PtやPdを担持した素子は内部よりも表面の方が高いガス感度を示した。これらの結果から,センサ材料の水素酸化活性が低い場合には,水素が酸素に比べて素子内部へ拡散しやすいために内部のガス感度は表面よりも高くなるが,センサ材料の酸化活性が高すぎると,水素が表面から内部へと拡散する過程で燃焼消費されるために内部のガス感度が低くなることがわかった。すなわち,ガスの反応性と拡散性がガス検出特性を支配する重要な因子であることを明らかにした。 2.多層積層型センサの設計 ゾル-ゲルスピンコーティング法で,厚さ0.4mumの内部電極型SnO_2薄膜センサ素子と,その上部に厚さ0.4mumのSiO_2薄膜を積層化したセンサ素子を作製し,各種被検ガスに対するガス検出特性を比較検討した。積層化により水素ガス感度は著しく増加したが,メタンガス感度はやや増加した程度であり,エタノールガス感度は大きく低下することがわかった。これは,被検ガスの種類によって,酸素ガスとの間に生じる拡散性の差が異なるためと考えられる。したがって,SiO_2薄膜の積層化によるガスの拡散性の制御により,水素ガス感度の大幅な向上と選択性の賦与を実現できた。今後,このSiO_2薄膜層上部に酸化活性の異なるSnO_2薄膜を積層化し,ガスの反応性と拡散性を同時にかつ厳密に制御することにより,半導体ガスセンサのインテリジェント化が図れると期待される。
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