従来報告されている光化学的二酸化炭素還元反応では、酸化反応側はあまり注目されておらず、アミンなどの高エネルギー物質を酸化している。本研究では、水を酸素源として進行する触媒的酸化反応と、これまでに研究代表者らによって見いだされてきた触媒的二酸化炭素還元反応を組み合わせることによって、水を電子源とする二酸化炭素固定反応系を構築することを目的とした。水を酸素源とする酸化反応として、パラジウムを触媒とするオレフィンの酸化反応(ワッカー法)を選んだ。この酸化反応と二酸化炭素還元反応を組み合わせるために、両者の電気化学的反応を電気化学的駆動力あるいは光触媒を用いた光化学的駆動力により組み合わせることを考案した。具体的には、ルテニウムトリス(ビピリジン)錯体の光励起状態が+0.8Vvs.SCEで還元的消光を受け、生成したルテニウムI価錯体が電気化学的二酸化炭素還元反応を進行させるに足る還元力を有していることから、+0.8Vvs.SCEで水を酸素源とするオレフィンの酸化反応を進行させる触媒の探索を行なった。その結果、酢酸パラジウム錯体に対して6倍モル量のキノンの存在により、キノンがパラジウムに配位することによってシクロヘキセンの酸化反応が低電位で進行し、シクロヘキサノンの生成が確認された。また、この反応はアルカリの存在により加速されることが明らかとなった。現在、ルテニウムトリス(ビピリジン)錯体を光触媒、ルテニウムビス(ビピリジン)錯体を二酸化炭素還元反応の触媒、パラジウム-キノン系をオレフィン酸化反応の触媒とする光化学反応を検討している。また、本研究の過程において、電気化学的に生成した有機ラジカルが二酸化炭素と相互作用する系を数例見い出した。
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