本研究は、溶液沈殿法によるセラミックス粉末調製に対して超音波エネルギーの化学作用(ソノケミストリー)を積極的に用いるための基礎的研究であり、具体的には、アルミノゲルの熟成過程に対する超音波照射の影響について調べた。すなわち、溶液中で非晶質アルミノゲルが溶解し結晶質水酸化アルミニウムが析出析出する過程に対して超音波を照射し得られた熟成反応の生成物を調べることによって、超音波の作用機構についての知見を得ることを目的とした。まず、熟成反応が適当な速度で進行し結晶質水酸化アルミニウム(バイヤライト)の生成状態が追跡し易い条件を探査した結果、AlCl_3水溶液とアンモニア水より作製したアルミノゲルを温度23℃、pH=10.3で母液中で熟成させればよいことがわかった。この熟成反応に対して種々の強度(0〜25W/cm^2)、周波数(20〜1740kHz)で超音波を照射したところ、バイヤライトの生成量が最大となる最適超音波強度(I_C)が存在することがわかった。この原因として、このI_C値以上の超音波照射ではバイヤライト相と共に生成する擬ベ-マイト相の生成が促進されるために相対的にバイヤライトの生成量が低下することを示した。一方、このI_C値以下では超音波強度が弱すぎて超音波照射しないのと同じであった。また、超音波周波数が低いほど、バイヤライトの生成は促進されることがわかった。以上の実験結果より、溶解析出反応におけるソノケミストリーの作用機構として、(1)凝集粒子の分散作用および溶液中の物質移動促進により溶解が促進されること、(2)キャビテーションの局部加熱/衝突促進により沈殿核生成が不安定化されること、を考察した。
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