1.2本の糖鎖を有する両親媒性化合物の合成 マロンニトリルを出発物質として、アルキルブロマイド(炭素数8〜12)によるアルキル化反応、次いで水素化アルミニウムリチウムを用いた還元により、アルキルジアミン(及びジアルキルジアミン)を合成した。得られたジアミンと糖ラクトンをメタノール中で反応させて、目的とする糖鎖含有化合物へと誘導した。糖ラクトンには、グルコノラクトン、ラクトビオノラクトンマルトビオノラクトンを用いた。目的物の精製は、メタノールまたはエタノールからの再結晶により行った。 2.界面物性及び生化学的応用 合成した化合物のうち、ジアルキル化物はほとんど水に溶解しなかったが、、モノアルキル化物は良好な水溶性を示した。ウイルヘルミ-法により得られたモノアルキル化物の表面張力-濃度曲線は明確な屈曲点を示さず、これら糖鎖含有化合物は気-液界面で特異な配向吸着挙動を示すことがわかった。そこで、塩化ピナシアノールを用いた色素法により、モノアルキル化合物の臨界ミセル濃度を求めた。グルコノラクトン由来の化合物では、アルキル鎖の増加に伴いミセル形成能が向上することがわかった。一方、糖残基や糖鎖の長さの違いによる臨界ミセル濃度への影響はほとんど認められなかった。 次に、特異的な糖結合性タンパク質でるコンカナバリンA(Con A)と合成した化合物との水中での相互作用について、沈殿反応をもとに調べた。その結果、親水部末端にグルコピラノシド残基を有する化合物では沈殿反応が観察され、Con Aとの相互作用が認められたが、ガラクトピラノシド残基を末端に有する化合物においては全く相互作用が観測されなかった。このことから、2本の糖鎖を有する化合物においてもCon Aのもつ特異的な糖結合能が保持されていることがわかった。また、この沈殿反応は糖鎖含化合物の臨界ミセル濃度付近から起こり始めることから、沈殿生成のためには単分子状態ではなく、ミセルの様な会合形態をとることが必要であることもわかった。
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