研究概要 |
先に、ビタミンB_<12>のモデル錯体であるコバルト錯体(Co(III))を循環反応剤として用いる電解反応プロセスの開発に一部成功している(J.Org.Chem.1991,56,5945)。すなわち、コバルト錯体を電解還元し、求核性の高いCo(I)錯体を作り、これをハロゲン化アルキルと反応させ、生体反応に類似した炭素骨格転位反応や炭素-炭素結合生成反応を見いだしている。しかしながら、こらの反応では、陽陰極分離セルを用いて塩基性条件下で行なうものであり、改良の余地が残されていた。そこで本研究では、反応操作をより簡便にし、触媒効率を高くするために単一セルを用い、反応の適用範囲を広げるために中性条件下で行なえる生体関連電解反応プロセスの開発を行なった。その結果、コバルト錯体を用いる種々の電解系の検討を行なったところ、新規にコバルト錯体-反応性電極からなる複合金属レドックス系の開発に成功した。そこで、この系を活用するハロアルキン類の分子内ラジカル環化反応について検討した。 1.実験-反応は、単一セル中、ハロアルキン体(100mg)および支持塩としてEtNOTs(300mg)をメタノール(5mL)に溶かし、コバルト錯体を加え、反応性電極を用いて端子電圧10V(80〜140mA)に保ちながら55〜60℃にて通電して行ない、環化生成物を得る最適電解条件(電極材料、コバルト錯体の種類と量など)について検討した。 (1)電極の効果-反応性電極として亜鉛、マグネシウム、アルミニウムで行なったところ亜鉛電極でよい収率を与えた。 (2)コバルト錯体の効果-[Co^<II>(salan)]、[Co^<II>(salophen)]、[Co^<III>(acac)_3]、コスタ関連体[Co(N_4)Cl_2]ClO_4およびコバロキシムを用いた場合について比較したところコバロキシムでよい結果を得た。 (3)コバロキシムの量の効果-5mol%で充分ハロアルキン類の分子内ラジカル環化反応が進行した。 2.結論-コバロキシムをメディエーターに用いる実用的で簡便な生体関連電解反応プロセスを確立した。
|