剛直な構造を有する大環状シクロファンの4つの水酸基に位置選択的にメチル基やエチル基等の置換基を導入し不斎分子を合成する方法として二つの方法論を開発した。まず、対応するハライドを用いて一段階で合成する方法は置換基の小さい場合は四置換体だけを生成するがメチル、エチル、プロピル基と大きくなると立体障害のためラセミ体の二置換体が主として生成することがわかった。次に、一旦四置換体を経由し、不斎分子を合成する方法は、種々ルイス酸を検討したところ温和な四臭化チタンを用いる条件が最も効率的であることがわかった。メチル、エチル四置換体を反応するとまずラセミ三置換体が優先的に生成し、さらに反応時間を伸ばすと三置換体の減少につれてラセミ二置換体が生成してくることがわかった。このようにして得られたラセミ体の三さいし、二置換体は液体クロマトグラフィーでそれぞれのエナンチオマーに光学分割できることがわかった。分割した分子の残りの水酸基に捕捉部位となりうる官能基を導入する条件を検討した。酢酸エチル残基やポリエーテル鎖を炭酸カリウム用いて反応することで目的物である捕捉部位をもつ不斎分子を収率よく合成できることがわかった。得られた化合物と有機物との相互作用を評価するためアンモニウム塩の抽出を検討した結果、1-フェネチルアミンを比較的効率良く抽出することがわかった。以上述べたように今年度計画した課題は達成された。
|