研究概要 |
ルテニウム錯体は優れたアルコール活性化能を有しており、アルコールによりアミン類のN-アルキル化を容易に行うことが可能である。このルテニウム錯体の触媒機能を利用することにより、これまでにないポリアミンの重合が可能になるものと考え、これを検討した。まず、この重合の可能性を明らかとするために、p-キシリレングリコールと3,4´-ジアミノジフェニルエーテルをモノマーとして用い、様々な条件により重合を行った。その結果、重合溶媒として、ポリアミン類の良溶媒である非プロトン性極性溶媒よりも1,4-ジオキサンが重合に適しており、その量が少なくなるに従って、得られるポリマーの粘度も上昇するが、あまり少ない場合には、重合中にポリマーが析出してしまった。重合温度として、少なくとも160℃以上が必要であり、180℃では短時間でゲル化してしまうことから、170℃が最適重合温度であった。触媒であるルテニウム錯体としては、塩素とトリフェニルホスフィンの両者を配位子として同時に持つことが必要であり、その量は、モノマーに対し4-5mol%程度が良好であった。以上より、ルテニウム錯体を用いることにより、ジアミンとジオールとから脂肪族ポリアミンが定量的に得られることが明らかとなった。次に、以上得られた最適重合条件において、様々な構造をしたジアミンとジベンジルアルコールとからの重合を行った。その結果、ジアミンとしては、脂肪族ジアミンを用いたときには、全くポリマーが得られず、それに対し、芳香族ジアミンでは、構造中にエーテル結合やスルホン結合やメチレン鎖を有するポリアミンを定量的に得ることができた。得られたポリマーの粘度は、その構造により、0.11〜0.72dL/gの範囲の値であった。
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