研究概要 |
柔軟なポリマーと剛直なポリマーとの会合における両ポリマーの側鎖官能基の空間位置の効果を以下の3つの系で調べた。 (1)低分子モデル化合物間の会合:剛直なモデル化合物として、rho-アミノフェニルアラニンを2残基含むヘリックス性ペプチドを設計、合成した。ペプチドの精製はゲレカラムを通したものをフラクションコレクター(設備備品)を用いて分取した。NMRおよびCD測定より、メタノール中で塩基性のアニリノ基(D)は3_<10>-ヘリックス主鎖に沿って特定の空間位置で並んでいることが分かった。コンホメーションエネルギー計算(設備備品のパーソナルコンピューター使用)より、2つのDの窒素原子間距離は約7Åと推定された。この塩基型ペプチドとカルボキシル基が柔軟なメチレン鎖で隔てられたジカルボン酸〔HOOC-(CH_2)_n-COOH,n=1-8〕との会合定数(K)を評価した。メタノール中においてKの値はnによって変化し、特にnが奇数の時に大きくなる傾向を示した。一方、rho-トルイジンの場合、この様な偶奇効果は見られなかった。即ち、ペプチドで見られた偶奇効果は酸-塩基性官能基間での協同的(一対の)水素結合形成に及ぼす官能基の空間位置の違いに基づくと言える。〔投稿準備中〕 (2)高分子-低分子モデル化合物の会合:芳香族ドナー基(ナフチル基)を一定の空間配置で並べたポリペプチドを設計し、合成した。(1)と同様の手法により、alpha-ヘリックス鎖に沿ってナフチル基が規則的に(最近接ナフチル基間距離〜8Å)配列していることが確認された。このポリペプチドと柔軟なメチレン鎖の両末端に芳香族アクセプター基を持つ分子との電荷移動相互作用に基づく会合性を調べた。剛直なポリペプチドは、柔軟な主鎖構造を持つポリビニルナフタレンやナフタレンと比べて、高い会合性を示した。〔投稿準備中〕 (3)高分子モデル化合物間の会合:rho-アミノフェニルアラニンを含む剛直な塩基型定序配列ポリペプチドとカルボキシル基を含む柔軟な酸型定序配列ポリマーpoly〔(CH_2)_n-C(CH_3)(COOH)〕(n=1,3,5)との会合性を調べた。ポリペプチドの重合度を上げる条件が最近見つかったため、現在会合挙動を検討中。結果が得られ次第、公表予定。
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