本研究によって、高分子電解質ゲル中の水の^1H NMRの化学シフト値は膨潤度(q)が減少するにしたがって低磁場シフトし、q^<1/3>と直線関係があることを見い出した。理論計算から、水素結合を通してクラスターを形成した水の^1H化学シフト値は水の分子間距離の減少またはクラスターの大きさの増大によって低磁場シフトすることが示された。これらの結果から、橋かけ度の増加に伴うqの減少によって、ゲル中の水の分子間距離の減少またはより大きなクラスターの形成が起こることが示唆された。一方、膨潤度が低くなると水の回転および拡散運動が抑制されることがわかった。さらに、網目高分子間の距離の減少にしたがってゲル中の水の運動が束縛されることが明らかになった。一方、ゲルの膨潤度が一定でも橋かけ度が増加するとゲル中の水の運動が束縛されることが明らかになった。これより、水の運動は網目高分子の運動に影響を受けていることが示唆された。 一方、ゲル中の網目高分子の構造と橋かけ度の変化に伴う運動の変化をNMR法によって調べた。その結果、ゲル中の網目高分子の立体規則性が見積られ、また側鎖の運動は速く、主鎖の運動は遅いことが明らかになった。ゲルの膨潤度が一定でも橋かけ度の増加とともに主鎖の運動は束縛され、これがゲル中の水の運動にも影響を及ぼしていることがわかった。 次に、疎水基である長鎖アルキルエステル基を導入した両親媒性ゲルを合成し、橋かけ度・モノマー組成・鎖長・温度などがゲルの物性に及ぼす影響を調べた。その結果、橋かけ度・モノマー組成・鎖長・温度はゲルの構造形成に重要な役割を演じていることがわかった。また、外部から印加した電場がゲルの構造と分子運動に与える影響を解析している。
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