ポリシランは、主鎖がSi-Si結合のみからなり側鎖に有機置換基を有するsigma共役系有機金属ポリマーであり、Si骨格次元で比較した場合、結晶性シリコンやアモルファスシリコン(3次元系)に対する1次元シリコンモデルであると見なすことができる。本研究では、Si骨格次元を制御したポリシランを合成し、さらにそれらを前駆体としたa-Siなどの半導体薄膜形成を目的とした研究を行った。 ポリシランの合成は、ジクロロオルガノシランとトリクロロオルガノシランの共重合により行った。これにより、直鎖ポリシラン、分枝ポリシラン、さらにネットワークポリシランへと、Si骨格次元が制御されたポリシランを得ることができた。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの結果から、Si骨格次元の増加に伴うsigma共役性の向上による、スペクトルのブロードニングおよび長波長シフトが観測された。また、シリコンネットワーク構造の形成による、光および熱安定性の向上が示された。シリコンネットワーク構造を有するポリ(n-プロピルシリン)薄膜を前駆体として、その熱処理によるa-Si薄膜の形成を行った。ポリ(n-プロピルシリン)の熱処理過程における赤外スペクトルの観測からは、400℃での側鎖プムピル基の消失が示された。吸収スペクトルからは、薄膜の熱処理に伴うバンドギャップの減少(400oCまでの加熱で3.0eVから1.2eVに減少)が観測された。遠赤外スペクトルの観測においては、アモルファスシリコン類似のSi骨格の形成が示された。これは、有機金属ポリマー前駆体法による新しいシリコン系半導体薄膜形成プロセスの可能性を示唆するものである。
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