フルオロアルキル側鎖をもつポリ(フルオロアルキルメタクリレート)は、側鎖のラメラ積層構造をもついわゆる櫛形ポリマーとして近年注目を集めている。この場合、フルオロアルキル側鎖が7個以上のCF_2を有するときに、側鎖は結晶化する。我々はこの高分子のalpha位のメチル基をフッ素原子に置換したポリ(フルオロアルキル2-フルオロアクリート)に関して、以下の知見を得た。 1.-CH_2CF_3や-CH_2CF_2CF_3といった短い側鎖であっても側鎖は結晶化する。この場合明らかにalpha位のフッ素原子がなんらかの関わりをもっていると考えられるが、延伸配向試料のX線回析写真から、この側鎖の積層構造は主鎖骨格も含んだ3次元的な秩序構造であると推測された。 2.-C_2H_4C_8F_<17>2のように側鎖が長い場合、側鎖の積層構造は複雑な温度変化をする。昇温とともにいったん室温のシングルレア-構造が成長したのち厚さが側話鎖長の2倍のダブルレア-構造へと転移し、そらにアモルファス状態へと転移する。他の含フッ素アクリル系高分子との比較から、側鎖の積層様式は、主鎖骨格の硬さや極性、そして温度にきわめて敏感であることがわかった。 3.IRスペクトルにおいて、エステル基のC=O伸縮振動吸収の分裂は、主鎖の立体規則性に由来するとされていた。昇温過程でのスペクトル変化が側鎖の結晶状態とよく対応していることから、結晶中のエステル基の酸素原子と隣接するalpha位のフッ素原子間の相互作用によると結論した。 このように、alpha位のフッ素原子はこの高分子の高次構造と深い関わりをもっており、ひいてはその熱的性質をも特徴的なものにしていることがわかった。 なお、費用の約8割を、試料成形用の熱プレス機の購入に充てた。
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