研究概要 |
(1)ポリマーブレンドにおける相溶性についての一般則を検討することを目的として、試料にはポリビニルアルコール(PVA)およびポリエチレンオキサイド(PEO)、さらにこれらの高分子の構造的特徴を併せ持ち、かつグルコース環上の3個のヒドロキシル基を位置選択的にメチル化したセルロース誘導体(2,3-di-O-MC,6-0-MC)を用いた。まずブレンド試料の作成条件は、予備検討を行った結果、ジメチルアセトアミドを共通溶媒としてそれぞれのホモポリマーを0.8%の濃度で溶解したのち、混合時間を24時間、混合温度はポリビニルアルコールがゲル化を始める55°Cと、ゲル化の起こらない75°Cの2種類を設定した。混合後のキャスト温度は50°Cとした。コ-アギュレート法(ゲル化法)による試料作成には凝固剤をメチルエチルケトンとし、-20°Cでおこなった。 (2)偏光顕微鏡によると、PEOは単独では上記のすべての条件で球晶が観察されるが、PVAとのブレンド試料の偏光顕微鏡像からは棒状組織が観察された。この組織のサイズはPVAの組成比が増加するにしたがって小さくなり、PVA-PEO間に相互作用が存在することを示している。また6-0-MCとのブレンドではほぼすべてのブレンド比で球晶が観察され、相互作用性が低いことがわかった。2,3-di-O-MCとのブレンドでは、PEOの組成比が35%以下でPEOの組織の判別が不可能なことから比較的強い相互作用の存在がうかがえた。2種のMCにおける相違は1級および2級ヒドロキシル基の水素結合形成性の難易を示唆している。 (3)赤外分光法によるPVAのヒドロキシル基の吸収帯のPEOブレンドによる高波数シフト量と、2,3-di-O-MCおよび6-0-MCをそれぞれPVA、PEOとブレンドした試料のシフト量の比較からも(2)と同様に相互作用性の順位がみられた。 (4)DSCによる熱力学的な検討においても上記の順位が支持される結果が得られた。さらなる検討が必要ではあるが、分子間水素結合は単にヒドロキシル基が存在すれば生じるというものではないといえる。
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