研究概要 |
本科学研究費補助金により,1kW級のホール型イオン推進機を製作した。またそれと同時に,推進機の作動に必要な直流電源,熱式流量制御器および電離真空計などを購入して実験を行った。現有の真空チャンバおよび排気装置を利用することができたため,速やかに実験を行うことができた。 本推進機を設計する際に,加速チャンネルの長さを変化させて実験を行うことができる点が1番の特徴であった。実験の結果,推進効率が加速チャンネルの長さに対して最大値を持つという結果が得られ,作動に最適なチャンネル長さが存在するという,我々の仮説の実験的な裏付けが得られた。特にチャンネル長の可変領域が0ミリから10ミリであるのに対して,最適チャンネル長がその中央付近の6ミリであったため,今後更に実験を進める上でたいへん都合がよい設計であったと言うことができる。また放電電流・電圧の振動も捉えることができ,今後のプラズマ不安定性の研究の基礎データを得ることができた。 これらの結果は,日本航空宇宙学会・関西中部支部講演会や宇宙輸送シンポジウムでその一部を発表したが,今後はいくらかの解析的な考察も加えた上で,来年度の学会や,学術雑誌等でその成果を発表して行く予定であり,またこの推進機を利用して,さらに物理現象(電磁流体流れやプラズマ不安定性など)についての研究を行い理解を深めて行くつもりである。
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