海洋綱構造物には、海水などによる強い腐食環境下にあり、塗装の保守が困難であるため、陰極防食が施されるが、その形状が複雑であるために、経験則による防食設計が困難である。本研究では、合理的な防食設計を可能にする目的で、境界要素法による構造物表面の電位分布解析法の改良を行った。 (1)石油掘削リグや桟橋などの海洋構造物の多くは鋼管構造になっている。そこで、境界要素法によるこのようなモデルの解析を容易にするために、円筒要素の他に円筒面をもつ三角形要素および四角形要素を開発した。 (2)海底土に鋼構造物を打込んで建造された鋼矢板岸壁や港湾の桟橋などの海洋構造物には、陰極防食が施される。このとき、構造物と犠牲陽極が形成する電場には、海水だけでなく海水を多量に含み、比抵抗が海水とは大きく異なる海底土も含まれる。従って、この電場の支配方程式は理論的に非線形となる。このような接触する2領域電場を境界要素法(BEM)で容易に解析するために、海水-海底土境界面で比抵抗が変化する二つの均質な副領域として、海水-海底土境界の電位が連続する条件及び電流密度が平衡する条件を満足するグリーン関数を用いて、この電場を一つの領域として解析できる方法を提案した。さらに、犠牲陽極の寿命に着目し、この方法によって、綱矢板岸壁および港湾の桟橋の犠牲陽極の合理的な位置について検討した。
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