岩手県八幡平周辺の葛根田地熱発電所周辺地域に分布する第三紀および第四紀火山岩ならびに火山砕屑岩中の石英の熱発光について検討した結果、以下のことが明らかになった。 本地域に分布する火山岩ならびに火山砕屑岩中の石英の熱発光量は、層序には無関係に変化し、葛根田地熱発電所に近づくにしたがって熱発光量は減少し、滝ノ上温泉から葛根田地熱発電所周辺においては熱発光は観察されなくなる。 葛根田地熱発電所より南南東約10km離れた玉川溶結凝灰岩類中の石英の熱発光量を基準とした相対熱発光量として表すと、5%等値線は葛根田地熱発電所から北西および南東方向に約2km、北東から南西方向には約1〜2kmの所に位置する。また相対発光量が40%以下の所は、セリサイト/モンモリロナイト混合層鉱物の分布域とほぼ一致する。これらの結果は、石英の熱発光量から現在の地熱活動の熱的評価が可能であることを示している。 従来、鉱物の熱発光現象を利用して、地質試料の年代測定に応用する試みがなされてきたが、鉱物中のパレオドースが温度と被熱時間により鋭敏に変化することから、一種の地質温度計として、地熱地域における熱源探査や地下温度構造の推定に有効であることが明らかとった。 葛根田地熱地域で熱発光の地質温度計的側面の有効性を明らかにできたことから、今後未開発の地熱地域の資源探査法として応用展開可能である。
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