(1)周期性を有する3成分信号から、反射波を検出するための手法として(1)調波成分の白色化、(2)3成分信号のディコンボリューション、および(3)スペクトルの位相情報のみを用いた反射波のディレイ検出法についてその具体的なアルゴリズムを検討した。 (2)実フィールドで観測される信号を模擬したシミュレーションを行い、上述の3つの手法の性能を評価した。その結果、連続型の掘削音に対して調波成分の白色化を有効に適用できることが明らかになった。また、3成分信号のディコンボリューションにより、信号の連続性に依存せず反射波のディレイを検出可能であることが示された。さらに、位相情報のみを用いた手法は、信号のZ平面での極の位置により性能が大きく左右されることが明かとなった。 (3)東北大学八幡平、釜石および石油公団柏崎フィールドで坑井掘削時に記録した信号を、上述の手法(1)により解析した。その結果、信号に高い周期性が観察された八幡平、柏崎フィールドでのデータから地下構造を推定することができた。また、突発型信号が計測された釜石とフィールドのデータを手法(2)により解析した結果、地下き裂からの反射波を検出することができた。 このように、本研究により、スペクトルの形状に依存し難い反射波の検出法を導出し、3軸VSP法の可探深度を拡大することができた。また、本研究により3成分信号から反射波を検出する際、従来の解析法では時空間での不確定性が存在するという新たな知見を得ることができた。このことは、今後、信号の特性に依存しない3軸VSP法を実現するためには新たな概念に基づく計測・信号処理技術が必要であることを示している。
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