研究概要 |
大豆グリシニン遺伝子の遺伝子工学的改質の成否を迅速に評価するために、エレクトロポレーション法による未熟子葉細胞での一過性発現系の確立を試みた。大豆品種ワセスズナリ(wild)およびそのグリシニングループI欠失変異体(mutant)を慣行法により栽培し、播種後日数(DAS)の異なる各未熟子葉よりプロトプラストを調製した。プロトプラストの単離効率はDASの増加とともに低下した。プロトプラストにCaMV35Sプロモータ支配下のbeta-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を導入し、外来遺伝子導入・発現効率の指標としてその酵素活性を調べた。GUS活性値はプロトプラストの状態に大きく依存し、DASの増加とともに低い値を示す傾向にあった。品種(wild,mutant)による差は認められなかった。電場強度(EFS)が400-1000V/cmの間では、EFSの増加とともにGUS活性値は高くなった。1000V/cm以上においてはGUS活性値は頭打ちとなった。パルス長(gamma)が5-40msの間ではgammaが増加するにつれてGUS活性値も高くなった。ただしgammaが高いほど、低いEFSにおいてEFSに対するGUS活性値の変化が急激になり、高いEFSでの変化は緩慢となった。ポレーション緩衝液にポリエチレングリコール(PEG)を加えたところ、GUS活性値は大きく増加した。ただし、プロトプラストにDNAを添加する前にPEGを加えると、逆にほとんどGUS活性を示さなかった。ポレーション後の培養条件(培地組成、細胞密度)を変えてGUS活性に及ぼす影響を調べたが差は認められず、GUS活性値は培養開始後48時間目まではほぼ直線的に増加し、以後速やかに減少した。得られた最適条件において、抗GUS抗体によるGUSタンパク質の検出を試みたが検出できなかった。また同様に、グリシニン遺伝子をCaMV35Sプロモータ、グリシニンプロモータ、beta-コングリシニンプロモータに各々連結したプラスミドをmutantに導入し、抗グリシニン抗体を用いてグリシニンの検出を試みたが検出できず、引き続き調査している。
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