本研究では、東京都大田区の住居系市街地を調査対象地区として選定し、住宅敷地の接道部における生垣等の囲障分布実態を把握するとともに、敷地条件及び住民意識との関連性について考察を加え、今後の生垣の保全や創出の方向性について検討した。 まず、囲障の分布実態については、27種類の囲障タイプが確認され、これらは生垣型、フェンス型、塀型、塀・フェンス型、その他及び無囲障の6タイプに大別されること、塀型が最も多く30%程度を示し、生垣型は10%以下にとどまったこと、生垣用樹種としてはツツジ類ツバキ類が中心であったこと等が把握された。また、1939年に行われた既住研究との比較から、生垣型の出現率の大幅な減少及び生垣用樹種の多様化が把握された。 つぎに敷地条件との関連から、敷地条件の相違等物理的側面からの制約を受ける囲障タイプは生垣型のみであること、敷地の細分化等に伴う生垣型の出現率の低下、接道空地の確保に伴う生垣型の出現率の上昇等が把握された。 さらに、住民意識との関連から、比較的多くの住民が、生垣による居住環境の向上を認識していること、一方で、剪定、病害虫の駆除等の維持管理に関わる手間や費用が負担として感じられていること等が把握された。 以上のことから、生垣の量的な拡大が必要であり、その際には敷地の細分化時に生垣の保全や復元を義務づけること、セットバックにより接道部の空地を確保しつつ生垣の創出につとめること、さらに生垣を設置している住民に対し、維持管理に関わる費用や労力等の助成を行うこと等の施策推進の必要性が把握された。
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