近年、高まる緑に対する社会的要求の中で、従来、農用林、里山として都市周辺住民と深いつながりのあった都市近郊林は、新たな注目を集めている。本研究では、京都市左京区の宝ヶ池公園の森林を対象にして、放置状態にある森林の風致的施業を目的とした管理に関する試験調査を行った。対象となった森林はアカマツが高木種として優先する林分と、コナラ、アベマキ等の落葉樹を主体とする林分に分けられる。また、低木層はコバノミツバツツジを中心とする植生である。森林管理の放棄によって林床はブッシュ状になっており、その相対照度は1%に満たない部分もある。そのため、公園としてのアメニティ機能を高くするために、コバノミツバツツジの開花率を上げることを目的とした施業として、中高木の除間伐と林床の整理を行った。その結果、林内の光環境は向上し、林床の相対照度は10〜20%にあがった。また、コバノミツバツツジの樹冠上部が位置する地上高3〜4mにおいても同様の相対照度の上昇が認められた。これによって施業後4年を経た今年度には、花芽の着芽率が非施業区に比べて顕著に高くなり、開花期にはほとんど花のつかない非施業区とは段違いの優れた景観となった。また、林床の整理によって土壌の乾燥化が考えられたため土壌硬度の測定を行ったが、現段階では施業による大きな違いは認められなかった。しかし、長期的にみても変化がないとは考えにくいため、今後も測定を継続する予定である。高木種の萌芽に関しては、現在解析中である。アカマツ林の地掻き処理は、対象地のマツクイムシ被害が顕著なため、今年度は行えなかった。これに代えて、京都大学農学部附属演習林徳山試験地に今年度の冬から新たに試験地を設定し、改めて試験研究を開始している。
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