研究概要 |
‘二十世紀'の発育枝と短果枝を11月から1月中旬まで経時的に採取し花芽の休眠の深さを調査したところChill unit400までが深い自発休眠にあたりChill unit600から1000が覚醒期にあたりChill unit1400のに完全に自発休眠は打破されるものと思われた。この期間の芽中のタンパク質含量は低温遭遇に伴い増加し、自発休眠が完全に打破されたChill unit1400の時点では低温遭遇前の約3倍の含量となった。またタンパク質を等電点電気泳動を行ったところいずれの区においてもChill unit200でpI5.6付近に新たなバンドが検出され、それ以降低温遭遇に伴い量的な増加が見られた。この部位を切り取りSDS-PAGEを行ったところM.W.約61,000及び65,000付近にChill unit200以降、二量体と思われる新たなタンパク質が検出され、低温遭遇に伴い量的に増加した。また、m-RNAを抽出し、in-vitroで無細胞質のタンパク質合成を行ないったところChill unit200以降同じ等電点のタンパク質が新たに確認された。 以上のことより本研究で検出されたpI約5.6・M.W.約61,000〜65,000のタンパク質は低温に遭遇することで新たに合成され、ニホンナシの芽の休眠打破と何らかの関連を持つものと推察される。 一方、マンシュウマメナシ青系及び白系に接木した‘二十世紀'を12月から2月にかけて経時的に加温栽培したところ地上部の生育は1月中旬までの処理区で抑制された。一方、地下部の生育はマンシュウマメナシ青系で早い時期から盛んであり、新根の発生量が多かった。さらに地下部を加温せず地上部のみ加温した場合にもマンシュウマメナシ青系で新根の発生量が多かった。 従って、ニホンナシにおける早期加温栽培に用いる台木種としてはマンシュウマメナシ青系が適しているものと思われる。
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