シンビジュームPLB_Sの増殖過程における培地成分の吸収量を測定し、Ca^<2+>の吸収量が少ないことを見いだした。しかし、この結果は、培養液の分析を行ない間接的に求めた、いわぬる‘見かけの吸収量'から推定したものであった。そこで、本年度は、培養中のPLB_Sを採取、分析することにより直接吸収量を測定した。その結果、シンビジュームPLB_Sの増殖段階は、個々のPLBが肥大する生長と、数が増加する生長の2段階があり、それぞれの生育段階に応じて、培地成分が吸収、利用されていることがわかった。すなわち、個々のPLBは、数を増加する前に、培地成分を活発に吸収して体内に蓄積し、その後、新しく形成されたPLB_Sに分配していた。しかし、Ca^<2+>の吸収量は少なかった。そこで、基本培地中のK^+とCa^<2+>の割合だけを変えることにより、K^+による、Ca^<2+>の吸収に対する拮抗作用が抑制されて、PLB_SはCa^<2+>を多く吸収できると考え実験を行なった。しかし、全濃度が80me/lと高かったため、K^+の絶対量が多くなり、あるいは、K^+/Ca^<2+>比の変化の範囲が1/2〜2/1と小さかったために、Ca^<2+>の吸収促進を行うことができなかった。ただ、K^+/Ca^<2+>比を低くし、Ca^<2+>の量を増加すると、過剰な養水分の吸収が抑制され、充実したPLB^Sを得ることができ、逆に、K^+の量が増加すると、乾物やでんぷんの含量が新鮮重の増加に伴わず、未熟なPLB_Sが形成されることがわかった。 以上のように、本実験においては、シンビジュームPLB_SへのCa^<2+>の吸収量を増加させることはできながた。しかし、培地成分の吸収や、でんぷんの蓄積がK^+/Ca^<2+>比により影響を受けることが明らかになり、今後、培地濃度の検討や、K^+/Ca^<2+>比の範囲の拡大、同じ2価陽イオンであるMg_<2+>との比を変えることにより、Ca^<2+>の吸収が促進できると推察した。
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