ユリ属の種・種間交雑雑種・品種の遺伝的な解析に、Randomly Amplified Polymorphic DNA(RAPD)法を応用した。一般にRAPD法の場合、PCRのアニーリング温度は低いが、ユリ属でRAPD法を行う場合は、比較的高い、54℃がアニーリング温度として適当である事がわかった。10から18baseのランダムプライマーを76種類試したところ、18種類のプライマー(24%)が有効であった。これらのプライマーを用いて増幅されたDNAフィンガープリントの様相を示し、各々の種・雑種・品種の間で多型を検出し、これらを効率よく識別することができた。ユリ属のRAPD法は種や雑種や品種の鑑定に有用であると考えられた。PCRによって増幅された一部のDNA断片は、ユリ属の節(亜属)に特異的で、同じ節に属する種や、これらの種に由来する雑種に共通して増幅された。このような、節特異的なRAPDマーカーは6つ特定され、このうち1つはSinomartagon節に3つはLeucolirion b節に、1つはLeucolirion a節に、1つはArchelirion節に、それぞれ特異的であった。近年節間交雑雑種がいくつか作出されているが、7つの節間交雑雑種にRAPD法を用いたところ、各節間交雑雑種の二つの交配親がそれぞれ属する二つの節に特異的なマーカーが増幅された。この事は、節特異的なRAPDマーカーは、節間交雑雑種の雑種判定に有効であることを示している。
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