研究概要 |
PCR法を確実に利用できるよう、本年度はその条件設定などの確立を主たる目的として実験を行ってきた。実際に採集されたキンウワバの1個体からでもDNAが増幅できるよう手法としてはRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法を用いることとした。この方法は短い配列のランダムブライマ-を使って未知の領域のDNAを増幅させ、電気泳動により得られたDNAの断片長を比較するものである。試料としては、成虫の脚部(一本)から抽出した粗ゲノムDNAや、雌成虫から抽出したミトコンドリアDNAを用いたが、どちらもDNAの増幅に成功し、両方を使って解析をしてみることにした。さらにDNA合成の基となる有効なランダムブライマ-の選定を試みたところ、オペロン社から製品として発売されている10塩基対のブライマ-が、個体レベルでの変異についても解析できたので、これを用いることとした。しかしながら10塩基対のブライマ-からら増幅されてくるDNAは、ブライマ-の種類によっては増幅されたDNAのバンドの数が大変多く、解析には困難な面が見られることが予想された。そのため宝酒造から製品化されている20塩基対のブライマ-を用いたところ、10塩基対のブライマ-で増幅させたときよりも増幅されたDNAのバンドの数が減少し、実際の解析に用いる際に有効であることが示された。また増幅条件については、ブライマ-と鋳型DNAを結合させるアニーリングの温度を当初は低く設定していたが、40℃以上に設定しても安定して増幅できることが分かったので、その条件で増幅させることとした。 以上の条件で数種のキンウワバのDNAを増幅させたところ,長距離移動をしていると報告されている種はしていない種よりも個体変異が大きい傾向が見られた。今後は供試虫を増やしてこの傾向が安定してみられるのかを詳しく解析する予定である。
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