ダイズの重要病害ウイルスであるダイズモザイクウイルス(SMV)は種子伝染性であり、その病原型から5系統に分類されているが、血清学的診断法による識別が困難である。本年度は、SMV2系統(SMV-B及び-C系統)について、既に解析された外被タンパク領域の遺伝子構造(塩基配列)をもとに、遺伝子診断法の確立を図った。SMV-B及びC系統は團場での多発が報告されており、塩基配列も90%以上の相同性を持つ。そこで2系統間で共通な2ケ所の塩基配列からSMVに特異的なプライマーを作製し、PCR法により解析したところ、何れのSMV系統においても感染葉からウイルス遺伝子断片が増幅されることを確認した。さらに一般團場から採集したSMV感染ダイズ葉を、このPCR法の他、従来より行われているELISA法(酵素結合抗体法)及びDIABA(Dot Immuno Binding Assay)により診断・比較したところ、ELISA及びDIBAでは陰性であった検体からもPCR法によりウイルスが検出された。さらに、増幅されたウイルス遺伝子断片の中で、B及びC2系統間で塩基配列の異なる部分に特異的なDNAプローブを各々作製し、ハイプリダイゼーション法により、増幅されたウイルス遺伝子からその系統を判別することが可能であることを確認した。以上の事から、PCRを用いた本遺伝子診断法は、高感度であるのみならず、ウイルス系統の固定・識別も可能であることから、今後、原種採取團場における健全大豆種子(ウイルスフリー種子)の育成に、とりわけ有用であると思われる。これらの成果については、平成5年度北陸病害虫研究会において発表し、現在論文準備中である。
|