高知西南開拓建設事業によって造成された高知県幡多郡大月町姫の井、土佐清水市斧積と、高幡開拓建設事業によって造成された高岡郡大野見付三ツ又において現地調査を行い、うね表層、うね間、側溝、土砂だめ、沈砂池、などから土壌試料を採取した.また、姫の井団地では自然土壌も採取した.分析項目は土性、分散率、風乾土水分、飽和透水係数、pH、全炭素、全窒素、荷電ゼロ点、遊離酸化物、粘土鉱物組成等である.以下、主に姫の井の土壌について結果及び考察を述べる. 造成地の表層土は自然土壌に比べて有機物、遊離酸化物の量が少なく、砂画分が55-75%を占める砂質土壌であった.また、うね間、沈砂池でもうねの表土より粘土・シルトが少ない.粘土の分散率(水分散性粘土と完全分散性粘土の比)は自然土壌の表層土、下層土ともに19%であったのに対し、造成地の表土では85%と非常に高い値であった.これは造成地土壌に有機物や非晶質のアルミニウム・鉄が少ないことと分散性の高いイライトを主な粘土鉱物として含むことに起因すると考えられた.また、うね間、沈砂池の粘土は分散宰39%であることから、分散性の高い粘土は流去しており.残された粘土は比較的分散性が低いことがわかる.これらの結果から、粒径の細かい画分は既に外部の環境中へと流出していることが明らかとなった.荷電ゼロ点(ZPC)は自然土壌が3.9-4.1、造成地表土では4.3-5.1、池の堆積物では4.3であった.自然土壌では有機物およぴ酸性の比較的強い中間種鉱物主体の粘土画分が多いためにZPCが低いが、造成地土壌では有機物・粘土ともに少なくイライト質の粘土であるため分散性が高く、結晶質の鉄が多いことからZPCかやや高いことがわかった.これらの結果から、造成地の土壌粘土の高い分散性を抑えるためには、有機物の施肥により粘土粒子間の相互作用を緩和することが最も効果的であると推測された。
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