Aspergillus aculeatus由来のセルラーゼFI-CMCaseをコードするcDNAがクローン化され、大腸菌における高発現系も構築した。さらにX線結晶解析により立体構造も解明され、本酵素分子は2枚のb-シートに挟まれたクレフトと考えられる部分に触媒部位が存在すると考えられる。部位特異的変異操作の結果から、このクレフト内に存在するGlu118-Glu202のアミノ酸残基のペアが直接触媒活性を担っているものと考えられるが、Glu118近傍に存在するAsp101が触媒活性に大きく影響していることが明らかとなった。そこでAsp101に影響されてGlu118の解離が促進されGlu202との間にpk値の勾配を作ることで触媒機能を有する3つのアミノ酸残基の共同作用による触媒機構を想定し、Aps101の触媒活性における役割を解明するために計画した。 Fl-CMCase遺伝子のAsp101に相当するアミノ酸コドンを以下のように部位特異的変異操作によってSer(D101S)およびGlu(D101E)にそれぞれ改変し、大腸菌において大量に発原させた変異酵素を精製してこれら異変酵素の酵素活性を反応速度論的に解析することでAsp101およびGlu118の触媒機構における役割を考察した。 作製した2種の変異酵素D101EおよびD101Sを野性型酵素とともに反応速度論的に比較解析したところ、km値には両変異酵素とも大きな変化が見られなかったが、Vm値は野性型酵素に比べて大きく変化し、D101Eでは約1/(1000)に、D101Sにおいては約1/(10000)にそれぞれ低下した。このことはAsp101はFl-CMCaseの触媒活性に重大な影響を与えており、本酵素の立体構造から考えられる触媒残基の一つであるGlu118の持っている本来のpk値になんらかの影響を与えたことで、著しい酵素活性の低下が起きたことを示唆している。
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