Bacillus ohbensisのサイクロデキストリン生成酵素(CGTase)遺伝子に対して部位特異的変異を行い、188位のアミノ酸を野生型のTyrから、既に作製したものも含めて、残りの19種類のアミノ酸に置換した変異遺伝子を構築した。変異遺伝子を枯草菌に導入し、各種変異酵素を枯草菌の培養上清より生澱粉吸着法を用いて精製した。変異酵素はいずれも程度の差はあるものの、澱粉分解活性とサイクロデキストリン(CD)合成能を有していた。また生成するCDはいずれの酵素の場合も野生型と同様のbeta-及びgamma-CDであり、alpha-CDの生成は認められなかった。野生型酵素、野生型と同様の性質を示したPhe188変異酵素、及びgamma-CD生産性の向上したTrp188変異酵素について、各CDを分解する反応におけるkinetic parameterを測定したところ、Phe188変異酵素では野生型と比較して大きな差は認められなかったものの、Trp188変異酵素ではgamma-CDに対するKm値が約8倍に上昇している事が観察され、その結果、gamma-CDに対するkcat/Km値が野生型の約1/4に減少していた。Trp188変異酵素は一度生成したgamma-CDを分解する活性が弱くなっており、その結果gamma-CDを蓄積するようになったものと考えられる。 176位と252位に位置するPhe残基をTrpあるいはTyrに置換した変異酵素を上記と同様の方法で作製したが、その酵素活性に特に大きな変化は認められなかった。 将来は野生型、及びTrp188変異酵素について、その結晶化とX線構造解析を行ない、188位のアミノ酸のCD生成に果たす役割について立体構造の面から解析する事が考えられる。
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