研究概要 |
酵素ニトリルヒドラターゼによるアクリロニトリルからのアクリルアミド工業生産に使用されているRhodococcus rhodochrous J1について、ニトリルヒドラターゼとリンクしていると予想されるアミダーゼの存在を明らかにするために、まず本菌を種々の誘導基質存在下で培養し、得られた菌体のアミダーゼ活性を、基質としてベンズアミドあるいはプロピオンアミドを用いて測定した結果、2種類のアミダーゼの存在が示唆された。そこでニトリル代謝上、ニトリルヒドラターゼにリンクしていると予想されるアミダーゼの構造遺伝子のクローン化を試みた。すなわち既にクローン化している低分子(L)型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の下流領域を含む9.4kbのDNA断片について切り縮めを行ったところ、EcoRI-SphI(2kb)領域を含むプラスミドがアミダーゼ活性を有していた。本領域はL型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の1.9kb下流に存在し、Rhodococcus sp.N-774やPseudomonas chlororaphis B23とは異なる配置を示した。1958bpの全塩基配列を決定した結果、ATGから始まりTAAの終始コドン迄、アミノ酸にして515アミノ酸(分子量54,626)から成るオープンリーディングフレームが存在し、他のアミド加水分解酵素遺伝子との相同性が認められた。本構造遺伝子をlacプロモーターの下で、大腸菌JM105内で発現させたが、SDS/PAGEで相当する太いバンドは認められなかった。そこでPCR法で開始コドン上流のSD配列を改良した本遺伝子をlacプロモーターの下流に接続したプラスミドpALJ30を構築し、大腸菌JM105での発現を、IPTG添加時間、培養時間、温度を変えた条件下で検討した結果、37℃で培養開始後、4時間目にIPTGを添加し、続いて28℃で4時間培養した条件が最大比活性を与えた。SDS/PAGEで解析した結果、分子量55,000付近に太いバンドが検出され、本タンパク質は全可溶性タンパク質の約8%を占める事が判明した。次に得られた無細胞抽出液から各種クロマトグラフィーにより本アミダーゼを電気永動的に均一に精製した。本酵素はホモダイマー(分子量11万)であり、脂肪族アミドとともに芳香族アミドにも作用した。またキラルなアミドである2-phenylpropionamideに対し、S(+)体を優先的に加水分解する立体特異性を有していた。さらに本アミダーゼはアシルトランスフェラーゼ活性をも合わせもっていることが判明した。
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