好熱菌のシャペロン遺伝子のうち、タンパク質のfolding促進作用を持つgroELとgroESの遺伝子シャペロニンに焦点を絞り、遺伝子の単離を行った。好熱菌として、Bacillus thermoglucosidasius KP1006とBacillusflavocaldarius KP1228を選んだ。設備備品費で購入した遺伝子増幅装置を用い、PCRスクリーニングによる本遺伝子の単離を試みた。用いたプライマーは、シャペロニンの保存領域として注目されるBacillus subtilisとEscherichia coliのGroELのC-末端付近、C-末端上流500-base付近、及びC-末端上流200-base付近に相補するそれぞれ24-、32-、26-baseの長さを使用し、予測されるPCR生産物の長さは、約500-base、1500-baseの2つだった。2つの菌株より染色体DNAを単離し、これを鋳型にPCRを行った結果、B.thermoglucosidasius KP1006株のものから、予測に合致する長さのDNAを確認することができた。そこで本菌の染色体から、制限酵素HindIII消化してライブラリーを作製し、250クローンを無作意に選び、PCRによるスクリーニングを行った。1株だけが2つのPCR産物を作り出す配列を有することが判った。このクローンのプラスミドは、6.4kbのインサートDNAを有していた。引き続き、PCRスクリーニングを指標に、サブクローニングを行った結果、3.1-kbの長さにまで縮めることができた。C-末端より24-baseのプライマーを使用して、塩基配列を調べたところ、200-base程の領域について大腸菌、枯草菌と60%以上の相同性を有することが判った。現在、本遺伝子の全塩基配列の決定、遺伝子産物の同定を行っているところである。また、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼのスクリーニングを、熱川、峰温泉から単離した研究室保存菌株を用いて行ったところ、98株より4株を選別することができた。これらの菌株についての検討も続行しているところである。
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