まず放線菌の生産する蛋白性アミラーゼ阻害剤T-76の大腸菌における発現を目的として、実験を行った。T-76の構造遺伝子をpUC18のlacプロモータの下流に連結し、発現用ベクターを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌を形質転換し、得られた形質転換株をIPTGを含む培地で培養したところ、菌体内にT-76阻害剤の生産が確認された。さらに、種々の宿主を検討したところ、宿主としてE.coli JM105株を用いたときに最も生産性が高く、培地など培養条件の検討を行った結果、最高で13mg/1の発現量を示した。 一方、放線菌による発現も同時に行った。放線菌用ベクターpIJ702、pSEV4を用いて、阻害剤発現用ベクターを構築した。これらのベクターを用いて放線菌S.lividans TK24株を形質転換したところ、培養液上清に強いアミラーゼ阻害活性が認められた。さらに培養条件の検討を行った結果、最高400mg/1の生産量を示した。この発現量は以降の部位指定変異の手法を用いた詳細な実験に十分な量であると考えられる。また、大腸菌、放線菌で発現した組み換えT-76阻害剤は野生型阻害剤と分子量的に全く同一であり、両者ともアミノ末端からのアミノ酸配列は野生型のそれと全く同じであることから、シグナル配列が親株と同じ箇所で切断されていることが明らかとなった。これは、以後の実験に有利な点である。現在、これらの発現産物の所在や性質の野生型阻害剤との比較を行っている。また、発現産物の簡便な精製法を確立するための実験も平行して行っている。さらに、合成オリゴヌクレオチドを用いた部位指定変異や、ランダム変異の導入にも着手しつつあるところである。
|