高等動物に普遍的に存在する核タンパク質HMG2は、DNAの高次構造を識別して結合、転写反応を調節する因子であることがこれまでの我々の研究より示唆されている。ラット繊維芽細胞3Y1の細胞周期における変動を解析したところ、G2/M期において、またアデノウイルスE1A、E1Bのトランスフォームにより、HMG2の発現が促進されていることが明らかとなった。一方、HMG2遺伝子の転写制御領域の解析より、この遺伝子発現には、転写開始点上流-621から-492の遺伝子領域が必要であり、この領域中の-499から-485の配列に結合する約85kDaの新しい転写因子(HMG2TF)の存在を確認した。そこで、HMG2遺伝子の転写制御領域をもちいて、HMG2のトランスフォームによる発現促進機構を解明することを目的とした。ヒトHMG2遺伝子5′-上流領域をクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子の上流に接続(CATプラスミド)し、ヒトHeLa細胞および293細胞にトランスフエクトし、HMG2プロモーター活性に対するE1A、E1Bの影響を解析した。その結果、いずれの細胞でも、E1A、E1Bの影響を受けるDNA領域は認められなかった。しかし、HMG2TFの結合量は2〜3倍増加し、HMG2遺伝子の転写量の増加(約4倍)と正の相関が認められた。以上の結果より、アデノウイルスE1A、E1BのトランスフォームによるHMG2の発現上昇は、HMG2TFの制御領域への結合量の増加によるものと推定された。
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