フグ毒テトロドトキシン(TTX)は電位依存性Na_+チャンネルに特異的に結合し不活性化するが、フグが体内のTTXに耐性を示す機構は解明されていない。我々は、Na_+チャンネル上でTTXと同一部位に結合するサキシトキシンの解離定数を調べ、フグでは他の生物より大きいことを見い出した。この特性は、構造に由来すると考えられたので、フグ筋肉Na_+チャンネルをクローニングし、一次構造を明らかにすることを目的として本研究を行った。まず、ランダムプライマーを用いてヒガンフグ筋肉の全RNAからcDNAを合成し、既報の電位依存性Na_+チャンネルの塩基配列を参考にして設計したプライマーを用いてPCR法を行った。これにより得られた断片をクローン化し、複数個のクローンについて塩基配列を解析した結果、これらがフグ由来のNa_+チャンネルの一部であること、また、2種以上のサブタイプが存在することが推定された。次に、これらをプローブとしてランダムプライマーを用いたフグ筋肉由来のcDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローン得た。このクローンの塩基配列を基にプライマー延長法を用いて上流域を得た。また、同クローンの一部をプローブとして、オリゴdTを用いたcDNAライブラリーから下流域を得た。現在、TTXの感受性を決定すると報告されている領域のアミノ酸配列を含め、解析を進めている。
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