シリンゴリド類のうち、結晶性が良いとされたシリンゴリド2について合成研究を行った。D-酒石酸ジエチルの二つの水酸基をベンジルオキシメチル基で保護し、エステル基を還元してジオールとした。水酸基の一つをTBSで保護した後、残った水酸基を酸化してアルデヒドを得た。これにエトキシエチル基で保護したトリブチルスタニルメタノールとブチルリチウムから調整したヒドロキシメチルアニオン等価体を付加し、生成したアルコールを酸化してケトンとした。エトキシエチル保護基をPPTSではずした後、別途調整した3-オキソデカン酸とDCC法により縮合させて、シリンゴリド2の合成に必要なすべての炭素骨格を組み上げた。次に分子内におけるクネフェナ-ゲル縮合によりalpha、beta-不飽和五員環ラクトンの調整を行った。種々の条件を検討した結果、ヘキサン-酢酸エチル中でシリカゲルと共に数時間撹拌するだけで70%程度の収率で生成することがわかった。次にBOM保護基を加水素分解によりはずそうとしたが二重結合が先に酸化されてしまったため、過塩素酸水溶液-THFで処理することにより二つのBOM基とTBS基を同時にはずして、環化をおこさせシリンゴリド2を得ることを試みた。粗成生物のNMRスペクトルにより、シリンゴリド2の生成を確認することができた。しかし得られた量は痕跡程度であり、再現性も良くなかった。現在BOM基を、酸によりはずれやすいアセトナドに変え、より温和な条件により脱保護、環化反応を行うべく検討中である。
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