研究概要 |
本研究においては、寄生植物と宿主の内生ジベレリン(GA)を詳細に分析し、ジベレリン生産に関する寄生植物の宿主への依存性について検討を加えた。 1.ナンバンギセルおよびその宿主ススキの内生GA イネおよびススキに寄生した両ナンバンギセルから、GA_<12>,_<15>,_<24>,_9,_4といったearly-non-hydroxylation pathway上のGAと、それらからの代謝物と考えられるGA(2beta-OH-GA_<12>,GA_<37>,GA_<25>)が検出された。一方、early-13-hydroxylation pathway上のGAとしては、GA_1が共通に検出されたに過ぎなかった。このことより本植物では前者の生合成経路が主に機能していることが示唆された。これに対し宿主のススキからは、early-13-hydroxylation pathway上のGA(GA_<19>,_<20>,_1)のみが検出され、またイネの栄養生長部位のGAも同生合成経路上のGAが主であることより、ナンバンギセルは宿主から独立したGA生合成酵素系を有しているものと考えられた。 2.ヤセウツボおよびその宿主クローバーの内生GA ヤセウツボ、クローバーともearly-nonおよびearly-13-hydroxylation pathway上の主要GAが検出され、特にGA_<44>が共通して、極めて高いレベルで含まれていることが明かとなった。このことは、ヤセウツボがGA生産をクローバーに依存していることを示唆しており、GA生産能は寄生植物ごとに異なる可能性が示された。 いずれの寄生植物にも共通する特徴として、これまで植物からの同定例の少ないGAが見いだされたことが挙げられる。特にヤセウツボからは、これまで植物からの存在が確認されていなかったGA_<47>が同定され、寄生植物固有の生理現象との関連性が示唆された。
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