多種の生理的役割を有するアスコルビン酸は、生体内に広く分布し、特に脳神経系細胞、白血球、副腎に多く蓄積している。また生体がストレスや炎症を被ると、これらの細胞や組織でのアスコルビン酸の消費量が著しく増大することが動物固体を用いて明らかになっている。アスコルビン酸の生理作用の初発段階である細胞内への輸送蓄積機構を解明することを最終目的として、輸送を担う蛋白質の諸性質を明らかにする事を試みた。(1)まずアスコルビン酸の能動輸送を測定し精製しうる系として、当初の給源組織であった副腎に加えて、原尿からの再吸収という機能を持つ腎臓に着眼し、ウシ腎臓から細胞膜小胞を作製して輸送活性を見いだすことに成功した。現在可溶性タンパク質として精製を進めるべく人工膜に組み込んだ再構成のシステムを構築するための条件検討を行っている。(2)近年グルコース等の低分子有機物質の能動輸送型輸送体の構造が一定の保存された領域を有しており、いわゆる遺伝子ファミリーを構成していることが明らかとなってきた。ヌクレオシド、イノシトールなどの構造がグルコースに似通ったものの輸送体もこれに属しており、アスコルビン酸輸送体もここに含まれると予想した。そこで相同領域をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行い、ウサギ腎臓からグルコース輸送体と類似構造を持つ遺伝子を検索し、新規な2種の輸送体遺伝子を担離する事に成功した。現在この輸送体の運搬する基質の検索を急いでいる。
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