1.可溶性エリスロポエチン受容体(_sEPO-R)をビオチン化し、6残基のランダムなペプチドを粒子表面に持つファージライブラリー液と混合後、ストレプトアビジンでコートしたプレート上にパニングして、_sEPO-Rに特異的に結合するものをスクリーニングしようとしたが、特異的に結合するファージは得られなかった。一方、_sEPO-Rを抗原として得られたモノクローナル抗体1G3をコートしたプレート上で同様にファージライブラリー液をパニングしたところ、特異的に結合するファージが濃縮されてきた。現在、このファージを精製し、_sEPO-Rのどの配列を有しているかを検討することにより、1G3の認識する配列を決定している。 2.エリスロポエチン(EPO)は赤血球系に特異的に作用すると考えられてきたが、神経系にも作用することを明らかにした。先ずコリン作動性ニューロン株SN6や副腎髄質由来クロム親和性細胞PC12上にEPO受容体が存在することを発見した。そして、EPO添加によりPC12細胞内のカルシウム濃度の一過的上昇や、モノアミン含量の上昇を検出した。PC12細胞は神経成長因子を添加すると神経突起を伸展するが、EPO添加では変化せず、増殖も促進されなかった。これらの結果からEPOは神経系では栄養因子として作用すると考えられた。また、マウスの胎児発生過程の神経系の形成にEPOが作用するするのではないかと考えて、RT-PCR法または免疫組織化学的手法でEPOとEPO受容体の胚および胎児における発現について検討した。その結果、胎生7日目の原始線条、胎生8日目の神経褶にEPOおよびEPO受容体の存在が認められた。さらに胎生10日目になると神経上皮の辺縁側および脊髄の原基にEPOの存在が認められた。以上の結果は、胎児の神経系形成にEPOがオートクリンまたはパラクリン様式で作用することを示唆しており、現在EPOの神経系での生物学的機能についてさらに検討している。
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