本研究計画のキイポイントは、特定の栄養素の摂取に対応して、発現が同調して調節される特異的遺伝子を2つ見いだし、両者の遺伝子構造を詳細に比較し、共通の栄養素応答エレメント(NRE)とそこに結合し遺伝子のON/OFFを行う共通の転写因子を探査することを目的としている。 膵臓リパーゼ(分子量5万)は、脂質消化のための最も重要な酵素の一つであるが、消化管内で効率よく食品脂質を加水分解するためには、コリパーゼと呼ばれるポリペプチド(分子量1万)を補因子として必要とし、一対一のヘテロダイマーとして機能する。2つの遺伝子は、おそらく同一の発現メカニズムの支配下にある。これをモデルとして以下の実験をおこなった。 (A)リパーゼ/コリパーゼのゲノムDNAのクローニング:リパーゼとコリパーゼのゲノムDNAをラムダライブラリーからクローニングした。 (B)リパーゼ/コリパーゼのゲノムDNAの構造解析:それぞれの遺伝子のエクリン/イントロン構成及び5´上流調節領域のDNA配列解析を行った。 (C)栄養素応答エレメント(NRE)の探索と解析:栄養素の摂取に応答した遺伝子発現をつかさどるゲノム上の特殊な配列(栄養素応答エレメント)を同定するために、コリパーゼ遺伝子の5´調節領域と考えられるCAPサイト上流0.5〜1Kbについて、DNAとタンパク因子との相互作用を調べる目的で、ゲルシフトアッセイおよびフットプリントアッセイを行い、転写因子結合領域を決定した。
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