研究概要 |
4種のマルビジン系アントシアニンの抗酸化活性を測定した結果アシル化アントシアニン(以下AAと略す)は約3.5nmol/mg linoleic acid のmalondialdehyde(以下MDAと略す、過酸化反応量の指標になる)を生成したのに比べ、アシル化していないアントシアニンでは約7nmol/mg linoleic acidのMDAを生成した。アントシアニン無添加の場合、約20nmol/mg linoleic acidのMDAを生成したので、両色素とも抗酸化活性があり、AAの方が優れていた。 AAの有機酸成分であるp-クマル酸はわずかながら抗酸化活性を示した(MDA量は約16nmol/mg linoleic acid)ものの、AAほどMDAの生成を抑制しなかった。またマルビジン3-グルコシドとマルビジン3,5-ジグルコシドにP-クマル酸を1対1の割合で混合した抗酸化活性はマルビジン3-グルコシドとマルビジン3,5-ジグルコシド単独のものと抗酸化活性はほぼ変わらず、有機酸自体にはほとんど抗酸化活性はなく、有機酸が糖に結合したアシル体に効果があった。 最後にAAであるマルビジン3-(6-O-pクマロイル)-5-グルコシドを代表的な天然抗酸化剤であるalpha-トコフェロール、カテキンの抗酸化活性と比較したところマルビジン3-(6-O-pクマロイル)-5-グルコシドはこれらの2倍以上の抗酸化力を示し、AAは天然抗酸化剤として十分有効であることがわかった。最近、赤ワイン中に含まれるフラボノイド成分が心疾患に有効であることがLancet341,454(1993)にも報告されているが、今回の科研費に基づいた実験からブドウのアントシアニンもその役割の一翼を担っていることが考えられた。
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