研究概要 |
本研究では,安定した流量を供給するダイアフラムポンプと高精度のマスフローコントローラーをもちい,CO_2濃度を高精度に制御可能な光合成・呼吸速度および蒸散速度を測定するシステムを安価に自作し,高CO_2濃度に対する樹木の光合成特性について気孔反応を中心に調べた.このシステムは,通常濃度下でもちいている赤外線CO_2ガス分析計のレンジを比較的簡単,かつ柔軟に高濃度範囲に対応させうる点に特徴がある.具体的には,0-600ppmの絶対値型の赤外線CO_2分析計をもちい,測定空気を正確に希釈することによって高濃度域の測定をおこなった.測定にもちいた同化箱は,温度調節可能なものを自作した.測定条件は,温度25℃,照度35〜40klx,同化箱への通気量2.51min-1の最適条件下で,針葉樹(スギ,アカマツ,カラマツ)は通常濃度(350ppm)から約5000ppmまで,広葉樹(シラカバ,ブナ,コナラ)は通常濃度から約3000ppmまでCO_2濃度を上昇させ,その時の光合成速度,蒸散速度を測定した.その結果,1500〜2000ppmで光合成速度が飽和し,広葉樹は3種とも,1000〜1500ppmと針葉樹に比べ,多少低いCO_2濃度で飽和した.また,その時の気孔コンダクタンスの変化は,広葉樹は針葉樹に対し,濃度上昇とともに気孔コンダクタンスが急激に低下した.そのため,針葉樹の葉内CO_2は,広葉樹よりも高くなった.このことから広葉樹では気孔の開閉による葉内CO_2濃度の調節能力が大きいことが考えられる.一方,それぞれの樹種間にも種による違いがみられ,針葉樹の中ではアカマツ,広葉樹の中ではブナの気孔コンダクタンスの変化割合は,それぞれ他の2種とくらべて小さかった.今回は,分析計の精度上,光,温度条件が一定の場合のみの測定しかおこなえなかったが,今後装置の改良を続け,様々な条件下におけるCO_2濃度特性を調べ,それぞれの樹種特性を明らかにしていく必要があろう.
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