研究概要 |
研究実施結果は以下に示すとおりである. (1)観測試験地場所は針広混交林などで行った.その試験地内において,高感度放射温度計による表面温度の画像観測と気象観測塔における熱収支.微気象観測を実施した.表面温度計測は気象観測塔から表面温度観測地点まで約400mの離れた場所から行い,計測間隔は約1分間から10分毎に行った.また,熱収支・微気象観測は10から15秒間隔で行い,その観測データを10分間から20分に平均して解析を行った. (2)熱収支・微気象観測の風速の鉛直プロファイルから空気力学的抵抗を推定する上で必要となる粗度長と地面修正量の推定を行い,気温分布に対する粗度長と風速に対する粗度長は等しいと仮定して空気力学的抵抗の計算を行った.また空気力学的抵抗を求める式は,大気が中立の時に成り立つ式である. (3)蒸発散量を表面温度から推定するためには,表面温度と気温の差,空気力学的抵抗より顕熱伝達量を求め,熱収支式の残差として計算する.そのため顕熱伝達量の推定精度が蒸発散量の推定精度に大きく依存するので,渦相関法による顕熱伝達量と比較検討した.渦相関法は顕熱伝達量を推定するのに,なんら仮定がなくその推定精度が一般に高いと言われている.この結果は,表面温度による顕熱量の値は渦相関法と比較して,ばらつきがあり,推定した値が過小となったり過大となったりした.その原因を考察すると空気力学的抵抗を推定する際の気温分布に対する粗度長と風速に対する粗度長は等しくない場合が観測日の日中に存在すること.あるいは大気の中立が満足されていないことが考えられた. (4)表面温度計測による蒸発散量分布は,夏季と秋季を比較した.観測した森林は針広混交林で,その結果は秋季より夏季の気温の高い日中では蒸発散量の分布の幅が大きく,これは針葉樹と広葉樹により蒸散量が異なるためでないかと考えられた.
|