研究概要 |
従来から森林生態系において、細根の生産量は純一次生産量の中で高い割合を占めている可能性があることが指摘されてきている。しかしながら、その方法はいずれも間接的であるため、未だ確実なものとは認められていない。本研究では細根動態の研究に土壌微細形態学的方法を用いることの可能性をさぐる目的で行われた。調査地は、京都市北部にある約120年生天然生ヒノキ林で、サンプリングを1993年10月に行った。採取した10個の土壌ブロックのサイズは、縦5cm横7cm,高さはA0層の厚さで、これをポリエチレングリコールで固めて、地面に垂直な切片をつくり、メチレンブルーで染色した。この土壌薄片上の細根断面を顕微鏡で観察することによって、細根断面を以下の6つ即ち、1)肥大成長を示す根 2)中心柱も皮層も青く染色される吸収根 3)皮層のスベリン化により中心柱の一部が分解して消失している吸収根 6)さらに分解が進んで表皮と内皮だけが残った吸収根、にタイプ分けした。肥大成長を示すタイプ1が全体に占める割合は1.7%で非常に少なかった。タイプ2・3・4・5は20%前後で、タイプ6は約15%であった。垂直分布を調べると、土壌表層から下に向かって、代謝が活発と考えられるタイプ2が斬減し、代わりにタイプ3あるいは5が増加している傾向が認められた。つまり土壌有機物層の特に表層部分で根の回転が盛んであることが示唆された。今後このようなサンプリングを経時的に行えば、林木の細根が非撹乱土壌中でどのような季節的変化をしているかがわかるであろう。
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