縮合型タンニンのカワラタケ菌体外粗酵素による変換においてタンニンは酵素タンパクと強固に結合し、その変換挙動を考察することが出来なかった。そこで、タンパク沈澱能の低いタンニンのモデル化合物である(+)-catechin及びprofisetinidin dimerを用いてその変換挙動を追跡した。 1.(+)-catechinの変換挙動 (+)-catechinは酵素処理において黄色化合物であるY-2及びY-3に変換されることが認められた。これらの両物質ともMassスペクトルから(+)-catechinの2量体に相当し、アセチル化物の^1H-NMRスペクトルからA環とB環が直接結合した構造であった。また、IRスペクトルからは共役カルボニル基の存在が示唆され、芳香環が酸化されてキノン構造をした(+)-catechinの2量体であると推定した。これらの物質は酵素反応時間が経過するに従い、より分子量の大きいポリマーへ重合されることが認められた。 2.核交換反応による(+)-catechin重合物の解析 当研究室で開発された核交換反応とは、BF_3存在下で過剰のフェノールと縮合型タンニンを反応すると、A環とB環を構成しているフェノール核が定量的に遊離し、タンニンの核組成を知る手法である。そこで本手法を用いて(+)-catechinの酵素処理による重合物の解析を行ったところ、処理時間の経過に伴いA環から遊離されるフロログルシノールとB環からのカテコールが共に減少することから、この重合反応はA環とB環の酸化カップリングにより成長するものであり、Y-2及びY-3はその過程の中間物質であることが予想された。 3.profisetinidin dimerの変換挙動 フラバノイド間結合を持つモデル化合物のprofisetinidin dimerの場合は、反応混合物のGPCによると反応初期に低分子化が著しく、その後経時的に高分子化が進行した。 以上の結果から、縮合型タンニンはカワラタケ菌体外粗酵素中の恐らくラッカーゼによりフラバノイド間結合の切断及びA環とB環の酸化カップリングにより解重合と重合が競争的に起こることが予想された。
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