研究概要 |
6種類の淡水魚(ブルーギル、オオクチバス、ハクレン、ニジマス、イワナおよびヤマメ)につき、背側普通筋のタンパク質組成を比較したところ、筋形質タンパク質は6.9〜7.3mgN/g、筋原線維タンパク質は14.4〜17.1mgN/g,アルカリ可溶性タンパク質は0.5〜0.8mgN/g,筋気質タンパク質は0.4〜0.8mnN/gと、いずれの魚類でも同様の組成をしめした。また、非タンパク態窒素は3.7〜4.7mnN/gのレベルにあった。筋形質および筋原線維画分をSDS-ゲル電気泳動に付したところ、前者の泳動パターンには著しい種特異性が認められたが、後者ではミオシン軽鎖付近のバンドに若干の種間差が見られたに過ぎなかった。 つぎに背側普通筋につき、0〜0.5Mの種々の濃度のNaCl水溶液でホモジナイズし、遠心分離後の上清のタンパク質濃度およびSDS-ゲル電気泳動パターンを比較した。その結果、タンパク質溶出量は0.1M NaCl付近で最低となり、それ以上の範囲ではNaCl濃度の上昇に伴って増加した。電気泳動パターンから、溶出量の増加はアクトミオシンに由来することが示唆された。海水魚のブリの普通筋につき同様の検討を加えたところ、溶出量のNaCl濃度依存性は0〜0.25M NaClで明らかに異なっており、淡水魚と海水魚では筋原線維タンパク質の溶解性に差があることが示唆された。 次に、常法により調製した筋原線維につき、種々の条件下でATPase活性を比較した。その結果、Ca-ATPase活性は、低塩濃度下では0.36〜0.64mumol Pi/min・mg,高塩濃度下では0.06〜0.11mumol Pi/min・mg,Mg-ATPase活性はCa存在下で0.60〜0.66、非存在下で0.02〜0.08mumol Pi/min・mgと、海水魚のものの報告値と同レベルであった。他方、各魚類から常法に従ってミオシンの単離を試みたが、コイを除いては精製過程で若干の分解物を生じ、プロテアーゼに対する感受性が高いことが示唆された。しかし、海水魚のミオシンにも程度の差こそあれ、感受性の高いものがあることが知られており、淡水魚ミオシンの特性とは考えにくい。
|