1.石川県美川町の加工場において各種試料のサンプリングを行い、塩蔵フグ卵巣と塩蔵浸出液、塩蔵後ぬか漬けを行った製品を試料とした。これらの試料より、食塩濃度2.5%、13%に調整した各種平板培地を用いて微生物の分離を行った。なお、塩蔵試料の場合には、さらに塩濃度20%に調整した培地も用いた。このようにして分離された微生物約1000株を以下の実験に付した。 2.分離細菌は大きく4群に分けられ、ぬか漬け分離細菌は好塩性乳酸球菌が多く、Pediococcus halophilusに該当すると示唆された。一方、塩蔵試料では他に赤色の好塩細菌と嫌気性の稈菌が分離された。嫌気性稈菌はグラム陰性、無芽胞で食塩25%の存在下で発育できる特異な性状を示した。他に、塩蔵試料から白色コロニーのPseudomonas類似の中等度好塩細菌も多く分離された。真菌類については分離のみを行った。 3.分離菌株より任意に選んだ175株についてフグ毒分解活性を調べた。すなわち、フグ毒を加えた液体天然培地にこれら菌株を接種し、約2週間培養後、これら培地中のフグ毒量をマウスを用いたバイオアッセイ法で定量した。しかしながら、対照として同様に培養した未接種培地と比較した場合、ほとんどの菌株にフグ毒の減少は見うけられず、9株のみが20〜30%の毒の減少を示し、これらはすべて真菌類であった。さらに、これのうち8株について液体合成培地を用いて同様の実験を行ったところ、4株に再び毒の減少が見られた。したがって、これら4株にフグ毒分解活性の存在が示唆されたが、一般的にマウスを用いたバイオアッセイ法により算出される毒量は20%の誤差を伴うとされており、本実験における毒の減少が20〜30%である点を考えあわせると、これら菌株をフグ毒分解微生物と断定できないでいる。今後、更なるスクリーニングを行う計画であります。
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