未風化軽石から構成される火山放出物未熟土(粗粒火山灰土)を基盤とする農地は、保水性に寄与する間隙量(マイクロポア)が少なく潅漑や降水によってもたらされた大部分の水分が下層に速やかに移動してしまう。つまり排水性や良好であるが保水性が著しく不良な土壌物理特性を示す土壌である。それゆえこのような農地は、生産性の低い農地となっている。そこで本研究では、バ-ク資材を用いた土層改良によって生じる土壌中の間隙特性の変化および水分・熱移動特性の解析を行い、水・熱移動の制御の面から改良効果について検討した。 バ-ク資材とは、林産廃棄物であるバ-クと畜産廃棄物である糞尿を、好気的条件下で完全に発酵させたもので、排水性、保水性に優れた土壌改良資材である。このバ-ク資材を20t/10a、粗粒火山灰土に混層することにより、容水量は0.5cm^3/cm^3から0.6cm^3/cm^3へ増加し、易有効水分(4.9kPa〜98kPaの吸引圧)を保持する間隙量は、0.08cm^3/cm^3から0.16cm^3/cm^3へ増大する。この間隙組成の変化や容水量の増加にともない、土層内の水変動が小さくなり、常時、易有効水分領域内で安定的な変動を示している。また対照区では降雨によって供給された水分(19.5mm)の30%(12mm)が保持され、24時間後(圃場容水量)では15%(3mm)であったのに対して、混層区ではそれぞれ60%(12mm)、25%(5mm)とより多くの水分を表層内に保持することが認められた。バ-ク資材を混層することにより圃場容水量が増大し初期の乾燥速度は相対的に大きいが、含水量が大きい時点で減率乾燥に移行することより、耐乾性の増大が確認された。また対照区とバ-ク資材混層区の土層の地温変動は、バ-ク資材の混層により熱容量が増大した結果、常に1〜2℃高い温度で変動していた。したがってバ-ク資材の混層による間隙構造の変化により容水量・易有効水分量が増大し、保水性の改良とともに耐乾性も改善でき、温度環境的にも有効であることが明らかになった。
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