研究概要 |
周知のように,寒冷地においては,土壌の凍結・凍上によって構造物や作物への被害が生じているが,こうした被害に対応するためには,土壌の凍結深を簡易に精度よく測定することが必要となる。これまでは,主にメチレンブルー凍結深計や土中に埋設した温度計による計測がなされてきたが,これらの方法では,過冷却状態を正しく評価したり,瞬間的な値を得ることは困難であった。そこで本研究では,土壌の体積含水率thetaを誘電率epsilonより求めるTDR(Time Domain Reflectometry)の原理を,土壌の凍結深計測に応用することを考え,当初の計画どおり,豊浦標準砂,マサ土を用いてTDRによる(1)土壌水分量計測実験,(2)凍結深計測実験を行った。 その結果,まず(1)の実験より,得られたepsilon-thetaのキャリブレーション曲線は,精度のよいthetaの測定に利用可能なこと,脱水・給水過程間で特にヒステリシスが認められないことなどが明らかになり,TDRの測定原理・精度を確認することができた。 次に,(2)の実験より,TDRによる凍結深の測定値を,定規によるそれと比較したところ,1.蒸留水でthetaを調整した土壌の凍結深は,平均絶対誤差が,theta【similar or equal】0.2の試料で0.28cm,theta【similar or equal】0.1の試料で0.34cm内の高精度で計測できた,2.塩類化土壌を想定し,2,000ppmの塩水でthetaを調整した試料では,同じく平均絶対誤差が,theta【similar or equal】0.2の場合に0.17cm内とさらに精度良く凍結深の計測ができた,3.thetaが小さくなるとTDRによる測定値には誤差が増加し,計測システムの性能上,theta【similar or equal】0.07を下回るような水分量の少ない土壌で なお,現場でのTDRによる凍結深計測試験も,現在実行中である。
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