研究概要 |
畑地における灌漑計画により合理的に立案するには土壌の水分状態を的確に推定する必要がある。そのためには土壌・作物・気象についての正確な情報が必要となるが,実際にこれらのデータを集積する事が困難な場合が多い。そこで,比較的入手が容易なデータをもとに土壌の水分状態を推定する方法が求められる。本研究では,そのような推定法の一つとして土壌水分欠損量モデル(SMDモデル)に着目し,モデルのもつ土壌物理的な妥当性を明らかにするとともに,さらなる改良発展を試みた。本年の研究実績を以下に要約する。 1.土壌-作物-大気連続系における水分移動を再現できる理論モデルを作成し,これを用いた数値実験を行った。種々の条件を想定して行った数値実験の結果から,SMDモデルの諸仮定が土壌物理的に妥当なものであるという結論が得られた。 2.SMDモデルが作物の全生育ステージにおいて土壌の水分状態を精度良く推定しうることを明らかにするため,実際のほ場において大豆の栽培実験を行った。しかし,本年は降雨日が極めて多く,栽培実験では所定の成果が得られなかった。 3.異なる土壌,作物における土壌水分データ,気象データ等の資料収集を行った。得られたデータは福岡地区(大豆),都城地区(大豆),宮古島地区(サトウキビ,オクラ)である。それぞれのデータにSMDモデルを適用し,土壌水分状態の推定を試みた。その結果,良好な推定精度が得られ,本モデルが高い実用性を有することが確認された。また,モデルの各パラメータが土壌,作物種ならびに土壌の水分状態に大きな影響を受ける事が明かとなった。さらに,数学的最適化手法を用いたSMDモデルの各パラメータの自動決定法を確立した。 なお,本研究の成果の一部を平成5年度農業土木学会九州支部講演会において発表した。
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