寒冷地の海岸構造物や融雪剤が散布される道路構造物では、外部から塩化物が浸透することにより、コンクリートの耐久性を著しく低下させている。しかし、塩化物環境下のコンクリートの劣化機構については、不明な点が多く、適切な防止対策が確立していない。 そこで本研究では、塩化ナトリウムがコンクリートのアルカリ骨材反応および凍害に及ぼす影響について基礎的資料を得ることを目的としてモルタルバ-法、DBV法を中心として実験を行った。本研究により得られた結果を要約すると次のとおりになる。 1)アルカリ骨材反応試験 モルタルバ-法においてはA判定、すなわち無害の骨材であっても、塩化ナトリウムが外部から浸透する環境では著しい膨張を示し、極めて危険である。また高炉セメントを使用した供試体では、スラグ置換率が80%以上において膨張抑制効果が認められたが、この高置換率のセメントは強度の面から使用は難しいと考えられる。したがってアルカリ骨材反応対策として行われている低アルカリ型セメントや混合セメントを使用し、配合時のアルカリ量を抑える方法では、塩化ナトリウムが外部から浸透する環境では劣化には対応できない。 2)凍結融解試験 水セメント比が55%の場合5%前後の空気量では、スケーリング劣化は防止できない。これを防止するためには9%以上の空気量が必要である。また空気量が5%の場合には水セメント比を40%以下にする必要がある。一方、高炉セメントの効果は認められなかった。 3)防水材の効果 浸透性防水材を用いて防水処理を施した供試体は、アルカリ骨材反応および凍害の双方において劣化は全く無く、耐久性を高める方法としては塩化物の浸透を抑制、防止することが最も効果的であった。
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