本研究では、緑化樹の大気浄化(NO_2吸収)機能と温湿度環境緩和機能を評価するための基礎的な実験データを得ることを目的として、いくつかの条件で植物のNO_2吸収速度、蒸散速度、光合成速度および葉温を同時測定し、それらの相互関係を調べた。実験は現有の人工光型グロースチャンバー内に設置した開放系のガス交換測定システム(同化箱法)を用いて行い、ガス濃度差などの出力データは設備備品として購入したパソコンを用いてガス交換速度に変換した。システムへのNO_2の吸着ができるだけ少なくなるように、配管にはステンレス、あるいはテフロン製のものを用い、また同化箱の壁面をテフロンシートで被覆したが、吸着量は温度条件などにより変化した。そのため、まず植物を入れる前の段階でシステムへのNO_2吸着量に与える測定条件の影響を調べ、測定値を補正する方法を検討した。植物材料には鉢植えのポプラのクローン苗(系統:I-214)を用いた。土壌水分が十分、大気の飽差が一定の条件で気温とひかり強度を変化させて実験を行った結果、NO_2吸収速度、蒸散速度、光合成速度は同様に変化し、気温15〜35℃で光強度500mumolm^<-2>s^<-1>(PPFD)以下では、それぞれのガス交換速度間の関係はほぼ直線となった。これらの関係は、気孔コンダクタンスによって説明できることが認められた。現在、大気湿度を変化させて同様の実験を行っている。今後は、光合成が飽和に達するような高光強度での実験、および土壌水分を変化させた実験を行う予定である。常緑針葉樹(スギ、キョウチクトウ)については、すでにクローン苗が用意できているため、ポプラと同様に実験を行う。
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